新宿で働く人材業界ビジネスマンのブログ

人材業界ビジネスマンの視点から、業界のこと、仕事のこと、キャリアのこと、健康のこと、ランニングの事など、忖度せず思いのままに綴っていこうと思います。※本ブログに記載の内容は私個人の私見であり、所属団体や会社の見解ではありません。

人材が活躍するには、「辞めさせない」ことではなく「紹介したくなる」職場づくりがポイントだというお話

離職率が低い」ことはゴールではなく、「従業員からの友人紹介が多い」という指標は今後ますます重要になっていくかもしれない、というお話です。


先日お伺いしたとある外食企業のFC社長様(FCオーナー)と会話していたときのことです。

 

その飲食チェーン全体では、好調な業績を背景に、全国的に店舗の従業員が不足している状況でした。
しかしお話を伺うと、そのFC企業様では、店舗の社員数、アルバイト従業員数共に、全国平均の充足率を上回っており、採用にはほとんど困る事が無いとのことでした。
そのFC企業様は首都圏のとある県に立地していますが、店舗展開しているエリアは駅から遠く離れた、郊外の人口密度が低いエリアで、お世辞にも採用が簡単とは言えないエリアです。
近いエリアの同業のFC企業や同業他社は採用に苦戦しているエリアです。

 

一緒に同行したメンバーが、

「やはり御社では人材の定着に力を入れられているんですね」

と聞いたところ
社長様は、

「人材の定着はゴールではなく当たり前。友人に紹介したくなって合格ラインだと考えている」

と答えられ、ハッとしました。

 

その企業様では従業員向けの満足度調査で、「今働く店舗を友人に紹介する可能性はありますか?」という質問への回答の数値を重要指標とし、店舗ごとに対策を実施しているとのことでした。

 

これ、ご存知の方もいるかと思いますが、eNPS(エンプロイネットプロモータースコア)という、もともとは顧客の自社に対するロイヤリティを図る指標を、自社の従業員の満足度を図る指標に応用したものです。

 

出典:eNPSとは? | 株式会社Emotion Tech(エモーションテック)


eNPSの計算方法

eNPSを算出するためには「あなたは現在の職場で働くことをどの程度親しい友人や家族にすすめたいと思いますか?」と質問し、0〜10点で評価してもらいます。

その中で0〜6点を付けた人を「批判者」、7・8点を付けた人を「中立者」、9・10点を付けた人を「推奨者」と分類します。

eNPSは「推奨者」の割合(仮に45%)から「批判者」の割合(仮に20%)を引いた数値(45%-20%=25%)のことを指します。(つまり、推奨者が増えるほど数値が高くなり、批判者が減るほど数値が高くなるように設計されています。)

 

確かに、従業員が知人を紹介したいと回答するのは、本当にやりがいを感じていないと回答しづらい内容で、なかなかハードルも高そうです。

eNPSが高い職場は、離職率が低いだけではなく、モチベーションやロイヤリティが高く、一人当たりの生産性も引き上がる傾向がありそうです。
そればかりか、人が辞めない上に従業員の紹介があるので、必然的に採用コストも最小化できていくはずです。


友人紹介制度の功罪

メリットばかりのリファラル採用(友人紹介)なので、最近は取り入れる企業も増え始め、リファラル採用を促進するITツールなども数多く世に出始めました。

しかし、あまりにメリットばかりが多く語られるあまり、本来の

職場の魅力化

既存従業員の満足度向上

リファラル採用の増加

というフローを踏まずに形ばかり真似してしまう企業が増えているも事実です。

 

風の噂で聞いた某飲食店では、都心の常に人が足りなくて困っている店舗のアルバイト採用に、「1名紹介で10万円」という超高額なインセンティブを支払っているそうです。

アルバイトの紹介に1名10万円の紹介料を払う、というのは明らかに高額です。
(学生とかであれば1ヶ月のバイト代を大きく超える金額)

 

バケツに穴が空いている(離職率が高い≒従業員満足度が高くない)状態で、
更に無理に蛇口をひねり出す為に、
「超高額インセンティブ」という外発的な動機のみでアプローチした結果、どうなるのでしょうか?

 

やもすると、そのお店は今後も10万円という人参をぶら下げ続けないと、友人紹介が促進されないかもしれません。
更に金の切れ目が縁の切れ目、とばかりに更なる早期退職につながるリスクすら抱えることになるかもしれません。

しかし、それでも短期的には応募を増やす施策になる為、友人紹介に高額インセンティブをつける企業が増えていると聞きます。


リファラル採用を短期的な採用施策ととらえるのではなく、自社の職場を表す重要指標であり重要戦略として考えているか?
今後ますます厳しくなる採用環境の中で勝ち抜いていく企業には、そんな真価が問われていく様な気がしてなりません。